赤城のふもとから山歩き

赤城のふもとに居をかまえ、山や花や家族のこと。

フィルム写真録 『晩夏』

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まだ、お盆だというのに…すっかり晩夏の様子。

 

 

実家の母から転倒して指を骨折したと電話があった。

少し躊躇する私に夫が行かなきゃダメだと言って、予定を調整し始めた。

 

転勤族だった父。

今、母が住まう横浜という街は、私にとって見慣れないふるさと。

 

去年13回忌を迎えた父の仏前に手をあわせ

また少し小さくなった母の体を洗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

月刊カメラマン ’94.9 大学・一般の部 銅賞

NikonFM Ai Nikkor 50mm f1.4 データ不明 フジカラースーパーG100

 

フィルム写真録 『驛舎で…』

 

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子供の頃から、あまり人と上手にかかわれなくて

あっちにぶつかり、こっちにぶつかり…

 

ちょっと変な写真をとる娘って思われてたから

出入りしていた写真屋のおじさんが

そのままでいいって言ってくれて嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

月刊カメラマン ’95.2 大学・一般の部 銅賞

NikonNewFM2 Ai Nikkor 50mm f1.4 データ不明 フジクロームプロビア100プロ

 

 

北アルプス 一ノ沢から大天井岳・常念岳を歩く 2日目

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朝4時に起床した。朝食の代わりに頼んであったお弁当を受け取り、まずは荷造り。

日の出を見たら、出発する予定だからだ。

空はすでに白みはじめている。気ばかり焦って、もどかしくてたまらない。

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写真を撮りはじめ、ようやく気持ちが落ち着いてきた。

珈琲を淹れる。

そのぬくもりを手で感じながら、徐々に雲海を染める朝日を眺めていた。

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仲良くなった同じ部屋の女性たちも、小屋から出てきた。

みんなの顔もオレンジ色に染まっていく。

これから始まるそれぞれの1日に、期待で胸を膨らませているに違いない。

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愛知から来た女性ふたりは、学生時代ワンゲル部だったそうだ。年を経て、また違う山の楽しみ方を身に着けた彼女たちには素敵な余裕があった。今朝もゆっくり朝の時間を小屋で過ごしてから出発するという。

その余裕が、なんかカッコいい。 

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靴紐を締めなおして、小屋を出発した。槍ヶ岳も赤く染まっている。

いい朝だ。 

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チングルマ(稚児車)の綿毛の朝露が、いっせいにキラキラ輝き始める。

こんな光景が楽しめるのは、泊りの山行ならでは!

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ピストンだから昨日歩いた道のはずだけれど、新鮮に感じる。 

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雲海に浮かぶ穂高連峰。 

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同じ小屋に泊まった蝶ヶ岳まで縦走する女性を追いかけていたこともあって、かなり速いペースで常念乗越まで戻ってきた。

彼女は大阪からソロで来ていたが、前日に中房温泉側から入山し大天井まで歩き、想像以上のアップダウンに少し不安になってしまったらしい。そこで、常念岳を一緒に登りましょうという話になった。歩くのが遅いからと、私より20分ほど早く小屋を出発したが最後まで追いつくことはなかった。

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常念小屋の前で、彼女と再会した。バッチや手拭いを買ったと言う笑顔に、もう不安な表情はなかった。 

大天荘でもらったちらし寿司のお弁当が、美味しい。エネルギーを蓄えて、いざ常念の頂へ。

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3分の1ほど彼女と話しながら登った後、「お先に、どうぞ。」という言葉に甘えて「それでは、後ほど山頂で。」と、先を行かせてもらった。 

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山頂から、彼女がこれから歩いて行く蝶ヶ岳への縦走路が続いている。

私もいつか、この道を歩いてみたいな。 

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祠にお参りし、珈琲を淹れた。

昨日も会った山岳警備隊の人達も休憩していた。パトロールしながら、心配のある人はいないか登山者たちの様子を確認しているようだ。頭の下がる思いと、自分はお世話になることのないよう気を引き締めようと思った。 

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来た道を戻り始めたところで、登ってきた彼女と会えた。

「また、いつか、どこかの山で会えるといいですね。」

そんな約束をした。何となく、本当に、また会える気がしている。 

 

乗越から一ノ沢登山口へ向かって下山した。充実した日々だった。出会った人々に、送り出してくれた家族に、そして山に感謝。

 

素敵な夏休みを、ありがとう。

 

 

 

 

<今日のルート>

大天荘5:22~東天井岳6:32~常念乗越(荷物デポ)7:35/7:50~常念岳9:10/9:30~常念乗越10:30/11:07~最終水場11:50~大滝ベンチ13:30/13:38~一ノ沢登山口~駐車場14:45 

 

 

 

北アルプス 一ノ沢から大天井岳・常念岳を歩く 1日目

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一昨年登った燕岳から続く稜線の先に行ってみたいと憧れた大天井岳

そして、去秋の蝶ヶ岳で誓った常念岳に、約束を果たす夏が来た。 

洗濯籠を空にして、台所の掃除をし、チョットだけ罪悪感を軽くして(笑)…お母さんの夏休み、1泊2日。

いつもより少し大きなザックと山靴を、布団と大きな犬のクッションも一緒に後部座席へ。

一ノ沢の駐車場で一晩あかしながら、学生時代もこんなことしてたな…ワクワク感も懐かしい。

あれ?1泊多いぞ…気にしない、気にしない。

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まだ、日の出前の暗い林道をヘッデンを灯しながら一ノ沢登山口へ。相談所のおじさんと少し会話を交わし、明るみ始めた森の中へ入っていった。

道端のいたるところで、タマガワホトトギス(玉川杜鵑)が薄暗い闇を照らす明かりのように咲いている。

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キツリフネ(黄釣船)。

朝日が山端を超え、空気がポワンっと明るくなる瞬間がいい。スッと朝露に光が射す。 

f:id:JKazy:20170804194628j:plain王滝のベンチで、朝御飯のおにぎりをパクリ。

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センジュガンピ(千手岩菲)。 

胸突八丁のあたりは、まさにお花畑。

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オオバギボウシ(大葉擬宝珠)とシモツケソウ(下野草)。 

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最終水場の手前で群生していた黄色い花は、サワオグルマ(沢小車)かな… 

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最後に九十九折の道を登り切り常念乗越に出ると、そこにはドーンと常念岳

こちらには、明日の帰りに寄る予定だ。 

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ハクサンオミナエシ(白山女郎花)にとまっているのは、天然記念物のミヤマモンキチョウ。 

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今日は、まだまだ大天井岳に向かって先へ。 

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花冠の内側と裂片の内側に長い毛があるので、チシマギキョウ(千島桔梗)かな… 

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時折、歩いてきた道を振りかえる。雄大な景色に刻んできた自分の小さな一歩一歩を思い、感動する。 

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タカネヤハズハハコ(高嶺矢筈母子)。花は満開もいいけど、蕾がほころびはじめる様子もいい。 

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会いたいと願っていたアオノツガザクラ(青の栂桜)。  

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幾重にも畳み込まれた先は、上高地。 

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イワヒバリが2羽いるよ…見つけられた? 

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美しいさえずりを聞かせてくれるイワヒバリ。うちの一羽が、顔の横を掠め飛んで行った。 

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東天井岳付近。ハイマツ(這松)から出てきて登山道をちょこまかちょこまか横切る複数の小さな影…何の前触れもなく、あまりにも突然で、見るものを疑ってしまった。数秒間、頭が真っ白になった後、ようやく正気を取り戻した。

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ライチョウの子供が5羽。よく見れば、母鳥もいる。私の姿に気づいた子供たちは、慌ててハイマツの陰に逃げ込んだ。しかし、母鳥は全く気にとめる様子もなく、砂浴びを始める。 

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写真を撮りながら、少しづつ距離を詰めていった。最終的に70cm近くまで寄り、モデル撮影会さながらの状態に(笑) それでも、母鳥は平然としていて(というより、まるでポージング) 、その様子に安心した子供たちが戻ってきてくれた。

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今日の宿、大天荘に到着。 手続きをすませ、わずか10分で踏める大天井岳山頂へ。

ずっと雲隠れしていた槍の頭が時折姿を現して、その場に居合わせた人たちと一緒に一喜一憂。

予定では牛首展望台まで往復するつもりだったが、雲が多いので中止した。

至福の時間を味わうために、冷凍したパウチドリンクで保冷して下界からしょってきたノンアルコールビール。ぷしゅっ!

あぁ…幸せだあ。

槍ヶ岳へと続く喜作新道を眺めながら、まったり。

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夕食後、夕日を見ようと小屋のあたりをフラフラしていると「 雲がとれて、槍が綺麗に見えていますよ」と女性が教えてくれた。

慌てて、山頂に向かう。「多めにしてください」とよそってもらった御飯で足りず、おかわりまでしたお腹が重い…山頂からの景色はあきらめ、途中で撮影ポイントを探した。

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小屋に戻ると、食堂にはランプが灯されカフェになっていた。 

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<今日のルート>

駐車場3:50~一ノ沢登山口4:10/4:20~王滝ベンチ5:45/5:52~最終水場7:58/8:10~常念乗越9:05/9:20~東天井岳12:05~大天荘13:30

 

 

フィルム写真録 『猫』

  

 

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鎌倉へ写真仲間と撮影散歩にでかけた。

あの時、這いつくばって撮る私を横で笑って見ていた人は、今や夫。

 

 

 

 

 

 

 

 

月刊カメラマン ’97.11 大学・一般の部 銀賞

NikonFM2 Ai Nikkor 85mm f1.4 データ不明 フジクロームベルビア

 

 

フィルム写真録 『あの夏』

 

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会社からの帰り道、街路樹の百日紅が綺麗に咲いていた。

 

 

おそらく19年、20年…そのくらい前に撮った写真。

前橋 臨江閣。

      

その時一緒に撮り歩いた写真屋のおじさんは、もういない。

 

 

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白砂山 花の登山道を歩く

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この夏、白砂山に行きたかったのには理由がある。それは、先月登った稲包山と一対の計画だったからだ。

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群馬県は、長野、新潟の県境にある稜線トレイルを整備中だ。それは、みなかみ町の土合登山口から白毛門、朝日岳、一ノ倉岳、谷川岳、平標山、稲包山、白砂山、横手山四阿山から鳥居峠を結ぶ壮大なロングトレイル。完成すれば、日本最長となる。

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ゴゼンタチバナ(御前橘)。

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初めて見た…青紫色のギンリョウソウ(銀竜草)。

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マイヅルソウ(舞鶴草)。

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エンレイソウ(延齢草)。

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初めましての、タケシマラン(竹縞蘭)。

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ユキザサ(雪笹)。 

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ミツバオウレン(三葉黄蓮)。 

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このロングトレイルのうち稲包山から白砂山までは未整備区間だ。地元紙である上毛新聞で、以前この区間を笹薮を踏み分け調査する様子に密着した記事が連載された。それは、NHKのドキュメンタリー番組にも匹敵するほど、とてもワイルドで浪漫に満ちた記事だった。

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妻と理想…もとい。ツマトリソウ(端取草)。覗き込むような様子が可愛らしく、こんなアングルに(笑) 

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くるんっとした様子が何とも愛らしいクルマユリ(車百合)。 

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記事を読んだ日から、その稜線を稲包山と白砂山の両面から見たい…そう思っていた。稲包山同様、白砂山山頂までの道のりも、いくつものピークを越えていく、なかなか歩きがいのある行程だ。しかし、その連なる頂が、ずっと先まで伸びていく様子には、この山深い上越の静かな力強さと美しさがある。

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ハクサンチドリ(白山千鳥)。  

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白砂山山頂。この先は、未整備区間のため、立入禁止。

上ノ間山、忠次郎山、上ノ倉山と続き、南に緩やかに流れ稲包山へと結ばれる。

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ニッコウキズゲ(日光黄萓)。 

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f:id:JKazy:20170722135821j:plainコゴメグサ(小米草)。 

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トリアシショウマ(鳥足升麻)。

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山頂でおにぎりを食べていると、新潟から来たという75歳の女性が登ってきた。聞けば、御主人を置いてきたいう(笑)

来た道が登り下りの連続だったということは、当然ながら帰り道も登り下りの連続。あまり山頂に長居をしていられず、女性よりも先に下山を開始した。猟師ノ沢ノ頭から下るところで御主人と往きあう。77歳…元気だなぁと思う反面、ここから山頂までコースタイムは往復1時間25分…大丈夫かなぁと心配も。 

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ウツボグサ(靭草)。 

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マルバダケブキ(丸葉岳蕗)は、咲き始めは控えめなんだな。ぷっくりとした蕾。  

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ハクサンフウロ(白山風露)とニガナ(苦菜)。

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ヤマゼリ(山芹)の仲間かな?

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オトギリソウ(弟切草)。本種を原料にした鷹の傷薬の秘密を洩らした弟を、鷹匠の兄が切り捨てたという伝説から名前がついたそうだ…。

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ガクのピンク色が美しいイタドリ(虎杖)。この漢字で、こう読む? 驚き! 

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随分前に登った八間山の方は、雲隠れ。 

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コケモモ(苔桃)に実がなってる!花も可愛いけど、実もいいな。 

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堂岩山に登る途中でふりかえる。一番高く見える頂は偽ピーク(笑)

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朝は見えなかった野反湖が、木々の間から垣間見えた。 

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帰りも花の撮影に夢中になりすぎ、予定の下山時間から30分ほど遅れてしまった。この時期の登山計画には、もう少し余裕を持たせた方がいいのかもしれない。

山頂付近で会った老夫婦のことが気に掛ったが、驚いたことに私の約15分後に下山してきた。なんと健脚なことか!実は、ふたりの姿を確認できないか気にしながら下山してきた。私の方がよほど足が遅かったようだ…がんばれ、自分!

 

 

 

<今日のルート>

自宅4:20~白砂山登山口駐車場6:20/6:30~地蔵峠7:20~堂岩山9:30~猟師ノ沢ノ頭10:02~白砂山11:12/11:32~猟師ノ沢ノ頭12:40~堂岩分岐13:15~地蔵峠15:10~駐車場15:45

 

<参考文献>

H28.10.2発行 ぐんま広報 「ぐんまのアウトドアスポーツ②」

栃の葉書房 別冊趣味の山野草 「山草図鑑」