なかなか山の名前を覚えられない私だが、この山だけはどこから見てもすぐわかる。あのテーブルマウンテンにいつか登りたいと思いつつ、今まで縁がなかった。友人を誘って、いざ…内山峠からカラマツ林をぬけると荒船山がよく見える。しかし、どうも様子がおかしい。駐車場にいた登山客が誰ひとり上がってこないのだ。もう一度地図を確認してみると、私たちは荒船山とは反対の内山牧場に向かっていた。
もう一度登山口に戻って、二度目のいざ出発。友人とこんな失敗もたまにはいい経験だねと笑いあった。歳を重ねて、失敗も笑って受け入れられる…今が一番心が軽い。
奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は恋しき
そんな百人一首を思い出す。古も今も人の心に響く景色は変わらない。
鋏岩修験道場跡に着くと、目の前に大きな岩が迫ってくる。苔むした沓石だけが静かに歴史を物語っていた。
露岩の急斜面をいくつか乗り越えると、ここが山頂だという事を忘れてしまいそうな平坦な道に出る。不思議な感覚だ。
しかし、船の舳先ともいえる艫岩は断崖絶壁。絶景と同時に恐怖感も十二分に味わうことができた。
同じ道を下山する。暖かな西日が森に差し込み、朝の景色と違う表情を演出してくれた。ほっこりとした日差しが秋の山にはよく似合う。