赤城のふもとから山歩き

赤城のふもとに居をかまえ、山だより、花だより

南アルプス 北岳 単独行

f:id:JKazy:20160723103947j:plain

富士山についで第2の高峰…北岳。この夏に、この頂に立つことが目標だった。

f:id:JKazy:20160723104915j:plain

高気圧の張り出しが弱く、期待した梅雨明けはまだ。広河原から見上げた北岳は、雲で姿を見せない。

f:id:JKazy:20160723105315j:plain

f:id:JKazy:20160723105354j:plain

森の中は湿度が高く、じっとりしている。谷側から聞こえてくる沢のせせらぎが、私の背中を押してくれた。

f:id:JKazy:20160723105958j:plain

ヒメシャジン。花の名山としても有名な北岳で、花達との出会いに期待が膨らむ。

f:id:JKazy:20160723111524j:plain

1泊目の白根御池小屋に到着する。荷を預け、カメラを持って散策に出掛けた。

家を出る前に北岳の天気を確認した時、2日目は曇りのち雨の予報だった。明日の朝の天気次第で、山頂は諦めて下山する予定だ。

出発する前に天候を心配して、友人が連絡をくれた。「気をつけてね」そう送り出してくれた家族のためにも無理はしない…無事に帰ること、それが唯一無二の約束。

f:id:JKazy:20160723111705j:plain

f:id:JKazy:20160723111606j:plain

f:id:JKazy:20160723111752j:plain

大樺沢二俣に向かう山道には、マルバダケブキの群生が夏らしい黄色い花を咲かせ、対照的なゴゼンタチバナタカネナデシコなどがひっそりと静かに咲いていた。

f:id:JKazy:20160723111939j:plain

小屋に戻り、鳳凰三山 を眺めながら生ビール。至福のひとときだ。

隣のベンチに座っていた60代の男性に声をかけられる。聞けば、岡崎から来たという。私も小学6年生から高校卒業まで岡崎に住んでいた。懐かしい地名が出てきて、話がはずむ。

他にも岡崎から5~6名の山岳会のグループが小屋に宿泊していた。聞き覚えのある方言が心地いい。私が明日、北岳に向かうルートを草すべりにするか、右俣コースにするか悩んでいると相談すると、先ほどの男性が「草すべりで行って、肩ノ小屋で仲間と合流する予定だから一緒に行こう」と誘ってくれた。

f:id:JKazy:20160723111835j:plain

f:id:JKazy:20160723111852j:plain

彼にミヤマハナシノブが小屋の前に咲いていると教えてもらう。きっと、自分では気がつかなかっただろう。

f:id:JKazy:20160723112125j:plain

山泊するときは、必ず日の出に合わせて起床する。お決まりのコーヒーを淹れ、そっと、その時間を待つ。この時間がたまらない。 

今日は、ほんのりと空をピンク色に染める静かな夜明けだった。

f:id:JKazy:20160723112229j:plain

ザックを背負い見上げた空には、目指す北岳の姿が確認できた…いざ、山頂へ! 

f:id:JKazy:20160723113338j:plain

f:id:JKazy:20160723113441j:plain

草すべりは、その名のとおり傾斜がきつい。軽く15キロオーバーのザックの重みで、気を抜けば後ろに転がってしまいそうだ。30分に1度ほど休憩を挟みながら進んでいく。同行した彼は花に詳しく、名前や由来などを私に教えてくれる。そして、私達と抜きつ抜かれつ進む10人くらいの女性ばかりのグループと互いに励ましあい、下山する人達からも温かいエールが贈られる。

f:id:JKazy:20160723112146j:plain

やっとの思いで稜線に出た。みんな笑顔だ。

f:id:JKazy:20160723112408j:plain

f:id:JKazy:20160723112437j:plain

仙丈ケ岳 は雄大な全容を見せ、甲斐駒ケ岳は雲の間から時々顔をのぞかせる…そんな様子を楽しみながら肩ノ小屋を目指した。

肩ノ小屋で、同行した彼の仲間と合流。仲間が「午後から天気は下り坂となり、夜から雨だ」という。やっぱり…そう思っていると、彼らは肩ノ小屋に泊まる予定を変更し、御池小屋に泊まろうと話していた。私も迷いが吹っ切れた。肩ノ小屋で朝日を見るのが楽しみだったが、雨の中、重いザックを背負ってあの急登を安全に下る自信が持てないのなら、答えはひとつだ。「その計画に、私もご一緒させてください」そう、告げた。

f:id:JKazy:20160723112602j:plain

「荷物は見ててやるから、山頂まで行ってこい」という言葉に甘え、サブバッグを持って出発。

f:id:JKazy:20160723125712j:plain

岩の合間にハクサンイチゲシナノキンバイが咲き、夏山の登山道を彩っている。 

いくつもの小さなピークを越え、少しづつ山頂へと近づいていく。

f:id:JKazy:20160723130038j:plain

f:id:JKazy:20160723112708j:plain休日は多くの登山者で賑わうという山頂は、平日のせいか比較的すいていた。北岳の先に延びる稜線には赤い屋根の北岳山荘がちょこんと建ち、その先には間ノ岳が見える。

風もなく、寒くない。この頂に立ち、幸せをかみしめる。

f:id:JKazy:20160723130132j:plain

f:id:JKazy:20160723113518j:plain

f:id:JKazy:20160723113558j:plain

f:id:JKazy:20160723113628j:plain

肩ノ小屋まで戻り、しばらく花の撮影を楽しむ。 

小屋の裏手には、ヤツガタケタンポポが一面に咲いていて、薄紅色を帯びたタカネヤハズハハコが深い緑の中で輝いて見える。この厳しい環境の中で逞しく息づく生命が、愛おしい。

f:id:JKazy:20160723113718j:plain

緑に映えるハイマツの赤い花。 

f:id:JKazy:20160723113757j:plain

f:id:JKazy:20160723113825j:plain

f:id:JKazy:20160723113855j:plain

凛と咲くミヤマオダマキ

f:id:JKazy:20160723113917j:plain

f:id:JKazy:20160723113948j:plain

紫色のタカネグンナイフウロと薄紅色のハクサンフウロ。今回、草すべりで大群落が見られた。「フウロ」は「風露」と書くのだという。うつむいた蕾を思い浮かべる…なかなか花の名前が覚えられずにいるが、漢字で覚えると覚えやすいのかもしれない。

f:id:JKazy:20160723114017j:plain

f:id:JKazy:20160723114129j:plain

イワギキョウのリース。

肩ノ小屋に別れを告げ下山を開始する頃には、雲が灰色を帯び雨の匂いがし始めていた。 

f:id:JKazy:20160723130212j:plain

昨日泊まった御池小屋の人は私達の事を覚えていて、夕食のメニューを変えてくれていた。

同室になった70歳代の単独行の女性は花を求めて旅をしているのだという。中国で見た青いケシの花畑、チューリップの原種の花が咲くウズベキスタンの旅…私は目を閉じ、想像の旅に出る。

夜から降り出した雨は朝を迎えても降っていたが、宿を出る頃に止んでいた。昨日の岡崎から来た男性3人のグループと行動を共に下山する。「これは単独行にあらず」という人もいるだろう。しかし、単独行だったからこそ一期一会の出会いを楽しめたのだと私は思う。「ねばならぬこと」は、意外に少ないものだ。あの柳のように柔軟に状況を楽しむこと…幸せだ!と思った者が幸せなのだ。

乗合タクシーの助手席に座り、おしゃべりを楽しむ。

「山の人は、みんな仲間になるからね」運転手のその一言が心に響く。

今日、山頂を目指す人々が、いい風景を目にしていればいい…そう願って北岳を後にした。

<今回のルート>

1日目

南アルプス市営芦安駐車場(無料)9:20~乗合タクシー(1,300円)~広河原10:10~白根御池小屋分岐10:45~白根御池小屋(8,300円)12:55

2日目

白根御池小屋5:43~右俣コースとの合流7:42~小太郎尾根分岐8:10~肩ノ小屋(8,000円)8:55/9:40(デポ)~山頂10:25/10:45~肩ノ小屋11:20/12:00~小太郎尾根分岐12:25~右俣コースとの合流12:40~御池小屋14:05

3日目

御池小屋6:25~白根御池小屋分岐8:10~広河原8:30~乗合タクシー~駐車場9:50