赤城のふもとから山歩き

赤城のふもとに居をかまえ、山や花や家族のこと。

谷川連峰 馬蹄形を歩く  1日目

2019/7/29~7/30

 

 

5年前、本格的に山歩きを再始動して

いつか、いつか歩きたいと思い続けた谷川馬蹄形。

白毛門ピストン、朝日岳ピストンと徐々に距離を延ばし

反対側の谷川からは、茂倉岳まで縦走し

いよいよこの両端を結ぶ時が来たのだ。

 

 

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うっすらと起きだした森へ

ヘッデンを灯して白毛門登山口から入山する。

湿度が高く、まるで熱帯雨林の中で歩いているようだ。

体中から汗が吹き出し、なかなかペースが上がらない。

 

松ノ木沢ノ頭で雲一つない谷川岳に迎えられる。

行こう。あの頂まで歩くんだ。

テント装備で20kgとなった荷を背負いなおし

一つ目のピーク、白毛門を見据える。

  

 

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ここは、ゆっくりでいい。

この先の行程を考えれば焦りは禁物だ。

 

そう自分に言い聞かせ、白毛門までかかった時間は4時間半!

昨年歩いた時は、3時間。

いくらなんでもかけすぎだ(>_<)

 

 

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テント装備の負荷を考慮して

登山計画には3時間半を見込んでいた。

初っ端からこの誤算。

 

黙々と歩を進めながら

自問自答。

 

頭の片隅に、ここ数カ月あった不安。

去年までの経験から立てる登山計画をこなせない今の自分。

その日だけの体調不良と言い訳できないことを認めざるをえない自分がいた。

 

 

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笠ヶ岳まで歩いて、次の行動を判断しよう。

撤退か、前進か…

 

 

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体調の変化を感じなかったわけではない。

考えられる原因を病院を受診しながらひとつひとつ潰していった。

幸いにも、病気ではなかった。

山もコンスタントに歩き、普段の生活に何か支障があるというほどではない。

しかし、今までと明らかに何かが違う。

気持ちに体がついてきてくれないのだ。

 

優れた運動神経があるはずもなく

てくてく、てくてく、一歩、一歩。

自分には、そんな取柄しかない。

でも、そんな取柄さえ打ち消してしまうような

得体のしれない変化が自分の中でおきている。

 

 

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笠ヶ岳までは、ほぼ計画通りに歩くことができてホッと胸をなでおろした。

白毛門で遅れた1時間をカバーするために、登山計画を見直す。

 

蓬峠まで歩く予定を清水峠までにし、テント泊を避難小屋泊に変更することとした。

前日にテント泊の旨を伝えていた蓬ヒュッテと家族に計画の変更を伝える。

(笠ヶ岳山頂では、ソフトバンクスマホも電波が通じます)

 

 

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朝日岳の手前の小烏帽子、大烏帽子。

前回はここを朝日岳と勘違いして心が折れそうになったんだよねと

キスゲ(黄萓)の大群落の中、感慨深く歩いた。

 

 

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遠雷が聞える。

 

天気予報では午後3時頃から天気が崩れると言っていた。

宿泊地を清水峠にして正解だった。

 

 

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どっしりとした朝日岳の山容が見えた。

 

朝、言葉を交わして私を追い越していった男性と再び会い

やっと来たねと言葉をかけてもらう。

彼は朝日岳ピストンのようだ。

宿泊地を蓬から清水峠に変更したと伝えると

彼も、いい判断だと思うよと言ってくださった。

 

 

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毎度ながら、自信が持てない。

ミヤマシャジン(深山沙参)…だろうか。

 

<メモ>
ツリガネニンジンの花は輪生状につくが、ソバナは一本づつ花柄を出し先端に花をつける。
ツリガネニンジンの葉は普通輪生だがソバナは互生。
ツリガネニンジンのガク片は細長く反り返るが、ソバナのガク片は幅広で横に広がる程度。
・ソバナの葉には長い柄があるが、ミヤマシャジンの葉の柄は短く普通互生、稀に対生。

ミヤマシャジンの花柱は花冠より長く突き出る。萼片は披針形で鋸歯がない。

 

 

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朝日岳の周辺には池塘が点在する。

今年は4月まで積雪があり、その数は以前より多く感じた。

 

 

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霧が立ち込めた湿原は幻想的だ。

その中でぽつぽつと咲くキスゲの鮮やかさが、一層際立って見えた。

 

 

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そして、人が立ち入ることを断じてならぬと

伝える強さがそこにある。



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キンコウカ(金光花)。

 

 

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ミヤマホツツジ(深山穂躑躅)。

 

<メモ>

ミヤマホツツジの花柱は太く上に曲がるが、ホツツジは花の外に長くまっすぐつきでる。

 

 

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朝日岳から清水峠に小さいピークをいくつも越えながら降りていく道の脇には

多様な花々が咲いていて、普段あまり見かけないものも多かったが

ずっと鳴り続いている遠雷に追い立てられるかのように、写真を撮るのも控えめに先を急いだ。

 

 

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ミヤマナナコナ(深山飯子菜)。

 

 

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振り返ると、雲の間から見え隠れする朝日岳

馬蹄形を次に回る時は、もう少し余裕が持てる自分でありたい。

 

 

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今日の宿泊地、白崩避難小屋と三角屋根が特徴的な送電線監視小屋。

送電線監視小屋には6、7人の若者たちがいた。

聞けば鉄塔周りなどの草刈りに3泊4日で入っているという。

普段は林業に携わり、生まれも育ちも新潟だというその青年は

故郷にも仕事にも誇りを持って生きている感じがした。

 

しばらくして、避難小屋には二人の男性が訪れた。

群馬の山岳連盟の方々で、馬蹄形登山道の調査に来たそうだ。

3人で来たが、体調が優れずひとり白毛門で引き返したといい

ひとり分余るからと、すっかり私まで夕宴で御馳走になることに。

 

ひとりの方は、あの「ぐんま県境トレイル」の未開拓部分を調査し切り開いたメンバーの人だった。

私は地元紙で連載されたその登山道開拓ドキュメンタリー記事の大ファンだったので

羨望の眼差しで話を伺った。

おふたりから出てくる南や北アルプスの全山縦走の話や

送電監視小屋が実は東電ではなくJRが管理するものだということ。

この山域は昔からJRが良く管理をしてくれ

冬にはスキーで送電線の確認に職員の人が来ている話など

たくさんの楽しく面白い話を聞くことができた。

 

白毛門まで4時間以上かかってしまった話をすると

テント装備ならそれが普通だよと言われ

少し弱気になっていた背中を押してもらえたような気がした。

 

よし、明日もがんばろう!

 

 

 

 

2日目に続く