2019/10/8~10/10
1日目。
谷川岳馬蹄形と並んで今年の大きな目標だった
計画の段階では7月の予定だったが、天候不順によりなかなか実現できず。
加えてしばらく続いていた体調不良から
今年は無理かもしれないと半ばあきらめかけていた。
秋に入って標準コースタイムで歩けるまでに体調が回復し
次男の中間試験と英検が終わったこの週を逃したらチャンスはないと
家族に行ってきます宣言をした。
すると夫から週末台風くるぞと情報提供があり
月曜日に留守中の仕事を慌てて片付け
うわぁぁぁあっとパッキング!
翌朝5時45分、前橋を出発。
まずは、バス乗り場のある仙流荘まで4時間半のドライブ。
相変わらず、下道オンリー。
節約、節約。
12時10分のバスに乗り、降り立った北沢峠は小雨が降っていた。
フジアザミ(富士薊)と美しい紅葉に囲まれた長衛小屋のテン場で
茨城から来ていた御夫婦とおしゃべりをしながら早めに夕食を済ませ
早々に寝袋に潜り込んだ。
2日目。
山に来たときは目覚ましをセットしなくなった。
セットした時間よりも大概早く目を覚ますからだ。
この日も予定の4時少し前に起きだし外の様子をうかがうと
頭上には満天の星空。
やったね! 天気予報通りだ。
5時45分、甲斐駒ヶ岳に向けて出発。
森の中はまだ薄暗い。
自然が創り出したロックガーデンの脇を抜け仙水峠に出ると
冷たい風が力強く吹いていた。
レインウエアの上着を素早く羽織りながら
山頂も風が強いのだろうかとこれから登る駒津峰の方を見上げた。
樹林帯を歩き出すとすぐに暑くなり
せっかく着たレインウエアを脱ぐ。
今日はまめに上着の調整をしないと風邪をひきそうだ。
身を置く場所によって体感温度がまったく違う。
途中、展望の良い場所で振り返ると富士の姿!
年配のベテラン山屋さんがアサヨ峰を指さし
昔、あそこで雷鳥を見たと話してくださった。
近年、徐々に回復しつつあるそうだ。
駒津峰から晴れわたる空の下にアルプスの峰々がぐるりと見渡せた。
仙水峠で心配した風は取越苦労だったようだ。
穏やかな心地の良い風が時折顔をなぜてゆく。
一つ一つの岩が大きく
あと10センチ手足が長ければどれだけ楽だろうかと思いつつ
前を行く人を追いかけながら直登コースを進んだ。
思ったよりおっかねぇと言いながら振り返った前を行く男性に
お先にどうぞと言われたらどうしようかと思ってましたよと笑いながら答えた。
途中の休憩で四季折々の尾瀬の素晴らしさで話が盛り上がり
なおかつ同じ年とあって
46年コンビで一緒に山頂を目指した。
山頂手前で直登コースを下ろうとする老夫婦。
先を進もうとする奥様を旦那様がやめようと止めている様子だった。
自分もまだまだ未熟者なので
あまり他の人の山行に口は出さぬようにしているが
このコースを下るのはなかなか大変なことが予想され
迷っているなら止めて巻き道を下った方がいいですよと伝えた。
しかし、奥様はずんずん先に進んでいく。
旦那様は「やめなさいって!死ぬよ!」と穏やかながらも強い口調で訴えていた。
伝えるべきことは伝えた。
私は彼らの技量を知らない。
だから、この先は自己判断だ。
そう思って私たちは山頂へ向かった。
しかし、あの御夫婦は無事だったろうかと
ずっと頭から離れない。
山頂は大パノラマが広がっていた。
一緒に直登コースを上がってきた男性とハイタッチ!
周りの人々がそんな様子を優しく笑いながら迎えてくれる。
山頂にいる人々とふっと繋がる穏やかな一体感。
南アルプスといえば山深い印象だが
甲斐駒ヶ岳の山頂から眼下に広がる街がとても近く感じられ驚いた。
八ヶ岳が長い裾野を広げ、まるで街を抱いているかのようだった。
去年歩いた鳳凰三山。
天を指さすように突き出した地蔵岳のオベリスクが遠くからでもはっきりと確認できる。
あの場所から来年は登りたいと思いを馳せた頂に今立っていると思うと
胸に込み上げてくるものがあった。
父からもらった非常食用の五目御飯を食べた。
ちょっと量が多いかな…と登る前は心配して
残してもいいようにジップロックに入れてきたが
もうお腹ペコペコで(笑)
爆速で完食!
紺碧の空に白く輝く甲斐駒山頂に後ろ髪をひかれながら
また来るねって別れを告げる。
最後まで行くか迷った摩利支天を
次に来る楽しみに取っておこう。
巻き道ルートは黄葉のトンネル!
紅色は刺し色を効かせて…
バイバイ、甲斐駒ヶ岳!
近づくときはモドカシイほどゆっくりなのに
離れていくときはセツナイくらいあっという間。
帰りのルートは双児山から北沢峠に下る道。
その双児山の先には、明日歩く仙丈ケ岳。
駒津峰から直登コースを御一緒した男性と再び一緒に歩くことになった。
お互いの子供たちが男の子ふたりだったり
学生時代に経験したバブル崩壊の話だったり(笑)
同じ年だと話題に事欠かない。
そして
この方、なんとソムリエ!
下山しながらワインの美味しい飲み方など楽しい話をたくさん教えて頂き
来月、成人を迎える長男にワイングラスのプレゼントもいいなと思い
いろいろ相談にも乗っていただいた。
何の分野も秀でた知識をを持っている人の話は面白い。
バスに乗る男性に北沢峠でお別れとお礼をのべて
私はテン場へ戻った。
長衛小屋から鍋を抱えた人が出てきた。
もしや、それは! おでん、ですか!?
そうそう私もそれが楽しみのひとつでした(´▽`*)
ジェットボイルに入れて頂いたおでんをあっつあつに温めて
まずは、生ビール ♪
そして、ソムリエさんから頂いたワイン ♪
隣り合わせた奈良から来ていた男性がよく訪れているという
憧れの大峯奥駈道の話を今度は聞きながら
山がくれた楽しい出会いに感謝した。
テントに戻ると、茨城の御夫婦も戻って来ていた。
甲斐駒ヶ岳で奥様が思いのほか疲れてしまったことや
仙丈小屋で1泊してから下山の予定だと天候の悪化も考えられ
明日の仙丈ケ岳は取りやめたとのこと。
岩や沢登りもするという御主人の的確な素晴らしい判断だと思った。
奥様にとって頼りがいのある存在に違いない。
3日目。
夜は前日よりかなり冷え込んだ。
朝、フライシートにはしっかり霜がついている。
今日はバスの時間に気をつけなければならない。
チゲ雑炊で体を温めて
戻って来てから撤収が素早くできるようテント内を片付けた。
今日も素晴らしくいい天気。
朝陽を浴びる北岳を見ながら森の中を歩き始めた。
昨日歩いた甲斐駒ヶ岳よりナナカマドの木が多いようだ。
5合目となる大滝ノ頭で紅葉を眺めながらひと休憩。
そして、富士。
小仙丈尾根を歩きながら7月の谷川馬蹄形を思い出していた。
見上げた山頂が段々あの大変だった武能岳に見えてきた。
しかし、今日は身体が軽い。
足がリズムよく前に出るのが自分でもよく分かった。
富士山のパワーを借りたかな?
見事なダブルカール!
昨日の甲斐駒ヶ岳。
歩いたルートを目で追って、我ながら人間の足ってすごいなぁと感心する。
ありきたりだけど、一歩一歩が確実に山頂へつながっているんだ。
山頂、捉えたり!
ナンバー1とナンバー2。
ここから見る北岳の姿がシャープでかっこいい。
前回は見られなかった北岳山頂からの富士山もいつか見てみたいもののひとつ。
仙丈ケ岳に登頂。
今年の目標がまたひとつ達成できた。
いろいろ悩みの多い夏だった。
それでも自分の体の変化に逃げずに向き合えたと思う。
体調を崩して、再び歩けない日がくるかもしれない。
でも、そんな時だって1歩1歩だ。
歩いてきた道が自分自身。
子供たちが幼かった頃、家族でテン泊登山した木曽駒ケ岳。
あの時はテント装備を夫が担いで、次男は私が背負って歩いたっけ。
自宅まで下道で帰る予定だから、できれば3時のバスに乗りたかった。
だから、大仙丈ケ岳は次に取っておくことにした。
次回は仙丈小屋に泊まって日の出を山頂で迎え、大仙丈まで歩こう!
そう、楽しみは小分けに ♪
たおやかな丸みを帯びた優しい表情の尾根に道が伸びていて
その丹渓新道を歩く人の姿を羨ましく見送った。
次回は、あのルートを下山ルートにしたい。
今日はテント撤収の時間も考え最短ルートをピストンで引き返す。
バスの時間が…
テント撤収が…
と思いながら、ついつい道草をしてしまうのはいつものこと。
だってアオノツガザクラ(青ノ栂桜)が、まだ咲いているんだもの。
紅葉越しの富士山。
車に乗り込み、眠くなったり渋滞したら休もうと運転しだしたが
興奮冷めやらぬ状態だったのか一度も睡魔に襲われることもなく
また、何故か渋滞に捕まることもなく
結局そのまま自宅まで4時間ノンストップで帰ってきた。
ただいまと玄関を開けると
次男から「お風呂入ってるよ~」と声がかかり
お風呂から出てくると夫が煮込みうどんを夕飯に作ってくれていた。
できすぎ!
そんな家族と山と出会いに
本日も感謝、感謝!
<本日のルート>