赤城のふもとから山歩き

赤城のふもとに居をかまえ、山や花や家族のこと。

夫と歩く唐松岳

2020/9/5~9/6

 

 

夫の希望だった唐松岳

留守を息子たちに任せ、ふたり出かける。

 

 

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出発前、黒菱駐車場から朝陽に輝く白馬の山々が見え

リフトの運行開始を待たずに歩き出すことにした。

 

 

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しかし、少し登った場所から雲海広がる絶景を前に

初っ端から足が止まり撮影会となる。

 

 

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浮かび上がる頸城山塊。

 

 

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ひとつ目のリフト終点まで登ってきた夫が既に大量の汗をかきながら

次のリフトを運行開始まで1時間待って乗るというので

私はひとり登山道を歩いて登り、リフト終点で夫の到着を待つ。

朝はあんなにクリアだった白馬の方にも雲がかかり始め

八方池に映る姿が写真に収められるかハラハラ。

なんとか間に合った…かな?

 

ここまでは母と25年程前にハイキングツアーで訪れたことがある。

八方池より先に続く道をいつか行ってみたいねと話した場所だ。

四半世紀を経て、ようやく願いを叶えることになるとは

我ながら気が長い。

 

 

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次第に夫の歩みがゆっくりになる。

5分歩いては立ち止まり、5分歩いては立ち止まる。

歩き始めはキツイものだ。

30分歩いてから休憩しようよと声をかけるが

身体が思うように動かないらしい。

 

扇雪渓で昼食をとる。

おなかを満たした夫はタオルを顔にのせ、しばし仰向けに横になった。

隣では小学生の男の子とその父親が休憩していて

私は微笑ましくその様子を眺めていた。

 

子供たちが幼かったころ

テントや食料を一手に引き受けて背負ってくれたのは夫だった。

9月は夫の誕生月。

唐松岳に行きたいという希望は何とか叶えてあげたかった。

休憩の後、夫の三脚を引き受ける。

 

 

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食後は私が先を歩いた。

およそ3キロの三脚分が軽くなったおかげか

夫の歩くペースも速くなった。

 

あと、もう少し。がんばれ、夫!

 

  

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ガスで真っ白になった景色に赤い唐松岳山荘が建っていた。

よかった…予定どおり午後2時到着。

 

生ビールで乾杯。

 

 

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山荘の外で湯を沸かしていると

ガスの中を見え隠れしていた唐松岳山頂が全貌を現した。

 

行くなら、今じゃないか?

夫も行っておいでよと水筒を手渡してくれた。

慌ててサンダルから登山靴に履き替えピークを目指す。

 

夫はもとより行く気がないらしい(笑)

過去2度の唐松岳も1度もピークは踏んでいない。

そんな奴はいないだろうと何故か誇らしげに語っていた。

 

 

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目の前にはどっしりとした五竜岳の姿。

 

 

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唐松岳の山頂から白馬三山へのルートが見え隠れして

どんな道が続いているのだろうかと想像をかき立てられる。

ずっと歩いていられたらな…そんな風に思うことがある。

ランナーズハイがあるように

イカーズハイという言葉もあるのだろうか。

すごく苦しい思いをして歩いても

下山した瞬間から次の山を欲している。

 

 

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夕食後、期待していた夕日は望めそうになく

大奮発した個室の窓から外を眺めた。

 

次第に天候は荒れ、雷雨と暴風がやってきた。

せっかく重い三脚を担いできたというのに星空の撮影も叶わず

朝になっても風が強く、渦巻くガスに日の出も望めず。

 

しかし、夫はこれは台風の風じゃないといい

日が出ればガスがあがり晴れ間も見えるだろうという。

その言葉をにわかに信じられないまま

やや風がおさまったところで下山を開始した。

 

 

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あ、本当だ…

下山を開始して間もなくガスがどんどん上へ上へと登っていく。

 

 

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昨日の歩きとはまるで別人のように

夫の動きが撮影ポイントを求めて素早くなる。

 

 

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長男と変わらない年頃の青年が夫に何か尋ね

山頂に踵を返して駆け上がっていった。

 

この晴れ間は山頂に戻るまでもつだろうかと聞かれたらしい。

この晴れ間のあとは徐々に天気は下り坂だが

このままじゃ消化不良だろうと背中を押したようだ。

 

彼の行った先を見つめ、自分の足じゃ戻ろうとは思わないけどねと笑った。

 

 

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所属する写真団体の事務的な仕事が増え

夫は一時写真をほとんど撮らなくなっていた。

こうして、また作品作りを始めてくれて本当によかったと思う。

 

 

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ただ、山に写真を撮りに来たいなら

ダイエットと体力づくりはしてください。

 

 

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空の色も雲の動きもスゴく素敵だったので

気付けばいつもより空多めに撮っている私。

 

 

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雲が再び空を埋め尽くし

ぽつぽつと雨も降りだした。

 

夫の読みどおりだ。

 

 

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あの青年が戻ってきて私たちを追い抜いて行った。

去り際に「なんとか間に合いました!」と笑顔で報告してくれ

夫ははにかむように笑い

走り去っていく青年の後ろ姿を優しく見送った。

 

 

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驚いたことに、ほぼコースタイムで下山。

 

エムウェーブに息子達を何年も送迎した懐かしい長野の街並みを抜け

家路についた。

 


 

 

<今日のルート>

スマートウォッチ電池切れにて、往路の途中までです。