自分で情報を収集したり、技術をひとつひとつ身に着けていくことは好きだ。しかし、もうひとつスキルアップするには、そろそろ手詰まり感があった。特に雪山については、やればやるほど机上だけではダメだと結論に至る。そこで、群馬県山岳連盟の個人会員となり、雪上技術を学ぶことにした。
アイゼン、ピッケルなどの道具の説明を受けて、谷川岳のマチガ沢へ。雪はシャーベット状になっている。所々で雪崩がおきた跡があり、歩きながら注意を払うべきポイントを教わった。
まずは、ツボ足での歩行訓練。下りの姿勢で、重心が後ろすぎると指摘を受ける。ソロでは、なかなか気づけない。ありがたいことだ。続いて、アイゼンをつけて。そして、滑落防止訓練。ピッケルを使用するのは初めての経験だったが、これが思ったよりも難しい。見るのと、やるのでは大違いだ。何度も斜面を登って繰り返し、体に身につけさせる。
昼食の休憩中に、沢を挟んで反対側で雪崩がおきた。それを教材に、起きやすい地形や起きた場合の対処法を教わる。
最後に、グループに分かれて雪洞掘り。我々初心者グループが4人で交代しながら掘る横で、ベテランの男性がひとりでみるみる造り上げていく。切り出された雪のブロックをレンガのように積み上げ、イグルーと組み合わせた雪洞が完成。
入口は腹ばいで入るほどの狭さだが、中は大人ふたりが入っても十分余裕がある。最後の仕上げはしていないのだというが、雪を通して届く柔らかな光は不思議な世界観があり、胎内回帰のような安心感があった。
訓練が終わる頃には、青空は薄い雲に覆われていた。
いろいろな技術を身につけられたことはもちろんのこと、何よりも楽しかった。思い切って入会してよかったと思う。
帰り際、ニホンカモシカが我々の存在に動じることなく、悠々と斜面を横切っていった。