赤城のふもとから山歩き

赤城のふもとに居をかまえ、山や花や家族のこと。

赤城 家族で過ごす休日

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7年前から地元のロボコンに家族で参加している。今年で8回目のエントリーだ。息子達の成長とともに、ロボットらしくなってきた。今や私は、雑用係。助け舟を求められた時だけ口や手を出していた夫も、出番がめっきり減ってしまい、彼は朝からカレー作りにいそしんでいる。

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本番を1週間後に控えた今日、ようやくロボットがほぼ完成した。試運転したいが、あいにく今日は練習台が使えない。駅伝部の朝練を終えた次男が帰宅する。久しぶりに、家族が1日一緒にいられそうだ。

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どこかに出掛けるにも、お盆休みの今日は混んでいるだろう。帰りの渋滞を想像するとますます出掛ける気分は失せてしまう。「ならば、赤城へ」夫の決まり文句。誰からも反論は出ない。

新坂平を過ぎたあたりで「お母さんは、歩いて小沼に行く?」と夫が言うので、大洞で車を降り地蔵岳を登る。登り始めて、夫の提案が冗談だったのではと気づき苦笑い。それでも、久しぶりの山道に足どりは軽い。

山頂で雲海を見下ろし、小沼方面へ下る。

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小沼に出ると、夫と息子達が犬を水遊びさせていた。「はな」が満足そうに報告にやってくる。

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夫が朝から仕込んでいたカレーを昼食に頂く。一升炊きの炊飯器が、山の景色の中でシュールだ。最後のご飯をどちらが食べるか長男と次男がもめている。普段「うるさい」と思ってしまう光景が、何だかとても幸せな時間に思えた。

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昼食を終えると、いつの間に用意したのか将棋盤を前に次男が「お母さん、一勝負!」。長男に将棋で負けだした時、悔しくて勝ち方を「こまお」で研究した。かろうじて、次男に勝利。しかし、詰め切るまでに時間が掛かり、次男の成長を感じられる一勝負となった。追い越されるのも、時間の問題か…

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大沼に移動して「はな」を水遊びに誘うが、あえなく撃沈。

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手漕ぎボートで息子達が湖面へ滑りだす。今日は今夏一番の賑わいだという。夕方になっても数々のボートが漂っていた。

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「ゆず」はペットショップでの生活が長かったせいか、ウチに来た時は目がするどかった。今ではとろけるような笑顔を見せてくれる。

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波内際で戯れる親子。昔を懐かしみ、シャッターをきる。

その先に息子達が帰ってくる姿が見えた。あと何年、君達は私達の傍にいるのだろう。旅立ちの日は、そう遠くない。

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プレジャーボートに乗った男3人が、戻ってくる。「ゆず」がしきりと「僕はここだよ」と尻尾を振っている。

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赤城県道をくだる途中に「焼きもろこし¥300」の文字。思わず立ち寄り、頬張ってみる。ん~、炭火で焼いたもろこしに、たまり醤油…くせになりそうだ。

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<今日のルート>

大洞側登山口12:20~地蔵岳山頂12:55/13:04~八丁峠側登山口13:21

赤城 大沼で夕涼み

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アスファルトから熱気がゆらゆらと立ち上っている。暑い。とにかく、暑い。

息子達が自主練メニューでジョギングを50分したいというが、夕方になっても気温はなかなか下がらないでいた。仕事から帰宅した夫が、「ならば赤城に行こう」と提案する。

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夏バテぎみの犬達も連れ、赤城山へ。気温20度。犬達の足どりも軽い。

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夕日を浴びて、逆光の彼らが金色に輝く。

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水遊びが大好きな「はな」は、特にご機嫌だ。目も輝いている。

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息子達のジョギングが終わる。「はな」は名残惜しそうだ。今度は、もっと早く来て水遊びをしよう。

玉原高原 鹿俣山~ラベンダーパーク

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「ここ、入っていくの?」車道からの登山道入り口は鬱蒼としていて、友人が不安そうな声をあげる。地図を確認して「そうだね」と森に入っていく私に、観念した様子でついてくる彼女がかわいらしくて、おかしかった。

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高く伸びた木立から光が差し込み、森の中は明るい。花の時期は過ぎていたが、地面からはぽこぽことタマゴダケが顔をのぞかせている。先ほどまで不安そうだった友人も、すっかり笑顔になってキノコ観察。

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鹿俣山山頂手前でシャクナゲが群生している小ピークがある。地図上でその舌を出した等高線を確認して、かくれんぼをしていた子供を見つけたような気分になる。私のもうひとつの山の楽しみだ。

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ブナ平へ向かう分岐をラベンダーパーク方面へ下山。視野が開け、スキー場に出る。夏らしい青い空に白い雲…牧歌的な光景に「大草原の小さな家」や「ハイジ」を連想し、思わず駆け下りたくなる。

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再び、森の中を下山していくとラベンダーパーク内に出る。観光客の中で登山姿の私達はちょっとした違和感があったらしく、「そんな泥だらけの裾で、どこから来たの?」と訊ねられてしまった。

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夏の暑い日差しに、ソフトクリームの誘惑は無敵だ。ラベンダーソフトは、ほのかにその味と香りがして美味しかった。

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ラベンダーはこれから見頃を迎える様子だったが、マリーゴールドやヒマワリが「今が盛り」とばかりに咲き誇っていた。

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帰宅して写真の編集をしていると、夫が写真を覗いて「望遠は?」と聞いてきた。「…観光客が多くて使わなかった」という私に「そういう時こそ望遠でしょ」。

スナップや心象風景ばかり撮ってきた私に、風景写真は課題山積だ。

<今日のルート>

リゾートセンター駐車場10:00~鹿俣山登山口10:04~ペンションビレッジへの分岐10:23~森林キャンプ場への分岐10:38/10:42~鹿俣山山頂12:00/12:22~ブナ平への分岐12:39~ラベンダーパーク13:25~駐車場15:00

登山道は標識もありわかりやすいが、多少の藪漕ぎやぬかるみがある。

赤城 地蔵岳~小沼 単独行

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梅雨が明けた。久しぶりにすっきりとした青空。

息子達も夫も出掛けている。ひとりでお昼を食べるなら小沼のほとりで食べようと、赤城に車を走らせた。

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雪の季節に下った道を、今日は登りで歩いてみる。

地蔵岳山頂から眼下に広がる大沼と黒檜山が、夏らしい姿を見せていた。

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地蔵岳から小沼へと下る道で、前のグループが足を留め何かを見ている。私も覗いて見ると、初めて目にする花だ。後から来た御夫婦に、タマガワホトトギスという珍しい花だと教えてもらった。

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大沼湖畔でも、咲き始めたタマガワホトトギスを見つけることができた。

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セイヨウミヤコグサ

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赤紫色のシュロソウはあまり華やかさはないが、私は好きだ。

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小沼の湖畔沿いを歩いていると、かわいい犬が水遊びをしていたのでモデルになってもらった。昼食をのんびりすませ、八丁峠から大沼へ出ることにする。

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タマガワホトトギスの名前を教えてくれた御夫婦に、大沼湖畔で再会。

よく知られている花の名前は少しわかるようになってきた。わかるようになると、何事もおもしろい。

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見晴山前地蔵岳登山口駐車場11:30~地蔵岳山頂12:12/12:17~八丁峠駐車場12:55~小沼13:00/13:25~八丁峠駐車場13:35~第1スキー場13:55~少年自然の家14:25~句碑めぐり道~駐車場14:45

 

満開の花畑をゆく苗場山 祓川コース 単独行

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前日の雨で木道は濡れていた。積み重なった石の登山道を、逸る気持ちを抑え慎重に進んでいく。

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星型のかわいらしい花をつけたキンコウカが、出迎えてくれる。

しかし、今日ばかりは登山計画の時間をしっかり守らなければ、足の遅い私は頂上に辿り着けなくなってしまう。花の撮影は帰路でと言い聞かせ、先を急いだ。

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友人と「今度、行こう」と約束をした平標山の向こう側に雲海が見え、しばらくすると山の稜線を超え、滝雲になった。 

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神楽ヶ峰をすぎ、緩やかな稜線をしばらく歩けば、見事な花畑だ。

白い花火のように咲くハクサンボウフウが斜面一面に広がっている。 

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登山道脇には、紫、黄色、薄紅色の花々が競い合うように咲いていた。

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「可憐な振舞い」という花言葉がよく似合うヒメシャジン。

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蕾のヤマハハコは純白で美しく、ウエディングブーケのようだ。

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夏の緑に映えるシモツケの花。

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散り始めたウツボグサの赤紫色の花穂も綺麗な色だ。この花穂が弓の矢を入れる靭(うつぼ)に似ていることから名付けられたという。

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花畑を過ぎると、雲尾坂の急坂が待っている。

これを登り切れば…山頂の景色を想像し、1歩ずつ上がっていく。

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坂を登りきると、石と泥の連続だったそれまでが嘘だったかのような景色が飛び込んできた。 

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水不足の影響なのか、湿原は既に少し秋の色に染まり始めている。  

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せっかく時間をかけて山頂に行くのだ。登山計画でも、頂上でゆっくり過ごす時間を確保しておいた。

涼しい風が吹く中で食べるトマトリゾットが美味しい。食後は雷清水で汲んだ湧き水でコーヒーを淹れる。幸せな時間。

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残りの時間で、湿原の散策に向かう。池塘が多く点在するところまで赤湯へ下る道を進む。 

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楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。今度は青空の映り込む池塘が見たいと思いながら下山を始めた。 

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登りでは気がつかなかったウメバチソウを発見。花もかわいいが蕾もかわいい。  

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夫には「しょぼい虫」と言われるが、どんな虫がいても、できるだけありのまま撮影しようと私は思う。その姿こそが真の花の姿に思えるからだ。  

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帰路まで我慢していた花畑の撮影を始めて間もなく、雨雲が広がりポツポツと降り始めた。慌てて雨支度をして、下山再開。

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結局、雨は降りださなかった。

登ってきた人に花の名前を尋ねられ、その時は答えられなかったが、珍しい薄紅色のウツボグサではないかと後でわかり嬉しかった。

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他の花々に埋もれながら懸命に咲くタチコゴメグサ。 

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くるんっと丸まった様子がかわいらしいクルマユリ

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空が明るくなってきた。

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下ノ芝を過ぎた頃には、青空が広がりだした。 

「またおいで」そう苗場山に誘われているようだ。

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和田小屋から駐車場まで下る車道脇にもオカトラノオなどの山野草が咲きあふれ、さわやかな高原を彩っている。

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<今日のルート>

前橋3:30~渋川I.C~湯沢I.C~第2リフト町営駐車場5:10/5:20~和田小屋5:42~下ノ芝6:53~中ノ芝7:35/7:43~上の芝7:57~分岐8:05~神楽ヶ峰8:20~雷清水8:45~苗場山山頂9:35/11:05~雷清水12:15~神楽ヶ峰12:37~分岐12:47~中ノ芝13:03/13:08~下ノ芝13:45~和田小屋14:43~駐車場15:00/15:30頃~国道17号~前橋17:30頃

※湯沢I.C降りてすぐのセブンイレブンが最後のコンビニ。

レンゲショウマ咲く赤城自然園

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お気に入りのカメラ…CASIO EX-ZR100。味わい深い表現が大好きだったのに、とうとう壊れてしまった。修理に出したいという私に、夫は「無理だね」とそっけない。

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気に入った道具だけを使い続けるタイプの私は、すっかり気落ちしてしまった。

見かねた夫から「これ、使ってみる?」と差し出されたのは、Canon EOS M2。Nikon派の私にとって、未知の世界だ。持ってみると、軽い。これなら、北岳のような山泊にも負担が少ないかもしれない。

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まずは試しに撮ってみようと、夏休みに入った息子達を誘って赤城自然園へ。

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今年は是非、写真に撮りたいと思っていたレンゲショウマが咲き始めている。

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園内は程よく手入れされており、自然の林の風情そのままに味わうことができる。

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両親がふたり揃って写真を趣味にしているだけあって、息子達は物心ついた時から首にカメラを提げていた。

生粋のカメラ小僧。

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長男は私が手にしているカメラを狙っていたらしく、少々不満気だ。手持ちのカメラに悪戦苦闘する彼の姿が、何ともかわいらしく思えた。

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海を越え、2000キロ超の旅をするというアサギマダラに出会う。

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道案内の看板の上にシャクトリムシ。小枝でつんつんとかまってみると、「私は枝です」と言わんばかりの演技に、思わず息子達と大笑い。

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セゾンガーデンの散策の小道は、少し趣が異なる。イングリッシュガーデンの雰囲気だ。

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気がつけば、閉園時間。午後から山の雰囲気を味わうにはいい場所だ。「お父さんも誘って、また来よう」息子達の提案に快諾した。

<赤城自然園>

2016年開園期間=春:4/8~6/5 夏:7/8~8/28 初秋:9/9~10/10 晩秋:10/21~11/20

開園時間=9:00~16:30 ※入園は15:30まで

入園料=大人:1000円 ※セゾン・UCカード提示で500円 小人:500円

ペット同伴不可 ※補助犬は可

レンゲショウマは咲き始めたばかり。見頃は1週間~10日後ではないかと思う。  

南アルプス 北岳 単独行

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富士山についで第2の高峰…北岳。この夏に、この頂に立つことが目標だった。

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高気圧の張り出しが弱く、期待した梅雨明けはまだ。広河原から見上げた北岳は、雲で姿を見せない。

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森の中は湿度が高く、じっとりしている。谷側から聞こえてくる沢のせせらぎが、私の背中を押してくれた。

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ヒメシャジン。花の名山としても有名な北岳で、花達との出会いに期待が膨らむ。

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1泊目の白根御池小屋に到着する。荷を預け、カメラを持って散策に出掛けた。

家を出る前に北岳の天気を確認した時、2日目は曇りのち雨の予報だった。明日の朝の天気次第で、山頂は諦めて下山する予定だ。

出発する前に天候を心配して、友人が連絡をくれた。「気をつけてね」そう送り出してくれた家族のためにも無理はしない…無事に帰ること、それが唯一無二の約束。

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大樺沢二俣に向かう山道には、マルバダケブキの群生が夏らしい黄色い花を咲かせ、対照的なゴゼンタチバナタカネナデシコなどがひっそりと静かに咲いていた。

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小屋に戻り、鳳凰三山 を眺めながら生ビール。至福のひとときだ。

隣のベンチに座っていた60代の男性に声をかけられる。聞けば、岡崎から来たという。私も小学6年生から高校卒業まで岡崎に住んでいた。懐かしい地名が出てきて、話がはずむ。

他にも岡崎から5~6名の山岳会のグループが小屋に宿泊していた。聞き覚えのある方言が心地いい。私が明日、北岳に向かうルートを草すべりにするか、右俣コースにするか悩んでいると相談すると、先ほどの男性が「草すべりで行って、肩ノ小屋で仲間と合流する予定だから一緒に行こう」と誘ってくれた。

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彼にミヤマハナシノブが小屋の前に咲いていると教えてもらう。きっと、自分では気がつかなかっただろう。

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山泊するときは、必ず日の出に合わせて起床する。お決まりのコーヒーを淹れ、そっと、その時間を待つ。この時間がたまらない。 

今日は、ほんのりと空をピンク色に染める静かな夜明けだった。

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ザックを背負い見上げた空には、目指す北岳の姿が確認できた…いざ、山頂へ! 

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草すべりは、その名のとおり傾斜がきつい。軽く15キロオーバーのザックの重みで、気を抜けば後ろに転がってしまいそうだ。30分に1度ほど休憩を挟みながら進んでいく。同行した彼は花に詳しく、名前や由来などを私に教えてくれる。そして、私達と抜きつ抜かれつ進む10人くらいの女性ばかりのグループと互いに励ましあい、下山する人達からも温かいエールが贈られる。

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やっとの思いで稜線に出た。みんな笑顔だ。

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仙丈ケ岳 は雄大な全容を見せ、甲斐駒ケ岳は雲の間から時々顔をのぞかせる…そんな様子を楽しみながら肩ノ小屋を目指した。

肩ノ小屋で、同行した彼の仲間と合流。仲間が「午後から天気は下り坂となり、夜から雨だ」という。やっぱり…そう思っていると、彼らは肩ノ小屋に泊まる予定を変更し、御池小屋に泊まろうと話していた。私も迷いが吹っ切れた。肩ノ小屋で朝日を見るのが楽しみだったが、雨の中、重いザックを背負ってあの急登を安全に下る自信が持てないのなら、答えはひとつだ。「その計画に、私もご一緒させてください」そう、告げた。

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「荷物は見ててやるから、山頂まで行ってこい」という言葉に甘え、サブバッグを持って出発。

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岩の合間にハクサンイチゲシナノキンバイが咲き、夏山の登山道を彩っている。 

いくつもの小さなピークを越え、少しづつ山頂へと近づいていく。

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f:id:JKazy:20160723112708j:plain休日は多くの登山者で賑わうという山頂は、平日のせいか比較的すいていた。北岳の先に延びる稜線には赤い屋根の北岳山荘がちょこんと建ち、その先には間ノ岳が見える。

風もなく、寒くない。この頂に立ち、幸せをかみしめる。

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肩ノ小屋まで戻り、しばらく花の撮影を楽しむ。 

小屋の裏手には、ヤツガタケタンポポが一面に咲いていて、薄紅色を帯びたタカネヤハズハハコが深い緑の中で輝いて見える。この厳しい環境の中で逞しく息づく生命が、愛おしい。

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緑に映えるハイマツの赤い花。 

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凛と咲くミヤマオダマキ

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紫色のタカネグンナイフウロと薄紅色のハクサンフウロ。今回、草すべりで大群落が見られた。「フウロ」は「風露」と書くのだという。うつむいた蕾を思い浮かべる…なかなか花の名前が覚えられずにいるが、漢字で覚えると覚えやすいのかもしれない。

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イワギキョウのリース。

肩ノ小屋に別れを告げ下山を開始する頃には、雲が灰色を帯び雨の匂いがし始めていた。 

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昨日泊まった御池小屋の人は私達の事を覚えていて、夕食のメニューを変えてくれていた。

同室になった70歳代の単独行の女性は花を求めて旅をしているのだという。中国で見た青いケシの花畑、チューリップの原種の花が咲くウズベキスタンの旅…私は目を閉じ、想像の旅に出る。

夜から降り出した雨は朝を迎えても降っていたが、宿を出る頃に止んでいた。昨日の岡崎から来た男性3人のグループと行動を共に下山する。「これは単独行にあらず」という人もいるだろう。しかし、単独行だったからこそ一期一会の出会いを楽しめたのだと私は思う。「ねばならぬこと」は、意外に少ないものだ。あの柳のように柔軟に状況を楽しむこと…幸せだ!と思った者が幸せなのだ。

乗合タクシーの助手席に座り、おしゃべりを楽しむ。

「山の人は、みんな仲間になるからね」運転手のその一言が心に響く。

今日、山頂を目指す人々が、いい風景を目にしていればいい…そう願って北岳を後にした。

<今回のルート>

1日目

南アルプス市営芦安駐車場(無料)9:20~乗合タクシー(1,300円)~広河原10:10~白根御池小屋分岐10:45~白根御池小屋(8,300円)12:55

2日目

白根御池小屋5:43~右俣コースとの合流7:42~小太郎尾根分岐8:10~肩ノ小屋(8,000円)8:55/9:40(デポ)~山頂10:25/10:45~肩ノ小屋11:20/12:00~小太郎尾根分岐12:25~右俣コースとの合流12:40~御池小屋14:05

3日目

御池小屋6:25~白根御池小屋分岐8:10~広河原8:30~乗合タクシー~駐車場9:50