赤城のふもとから山歩き

赤城のふもとに居をかまえ、山や花や家族のこと。

弓ノ手沢であの日の答合わせ

2023/6/17

 

 

沢登りはしたいけれど、自分の知識や技術不足が

いつか誰かに迷惑をかけたり

いつか誰かを傷つけてしまうんじゃないかと思い始めていた時

1年前のこの沢で恐れていたことが起きてしまった。

 

 

 

 

下山の終盤で、私が足を置いた一抱えもある大きな石が落石した。

石は下にいた同行者に危うく直撃するところだった。

偶然起きた事故のようだけれど、そうじゃない。

玉さんから来た予定ルートを地図読みをしていて不安に思ったところだった。

だから、自分の立てた計画表には別のルートを書いておいた。

それなのに、その場になって私は反対しきれなかった。

そして、落石をおこした。

 

 

 

 

その出来事が私に1度沢から離れる決断をさせた。

今はある山の会に入会して

ライミングをはじめ様々なことを勉強させていただいている。

怪我もあって今年の沢は正直ないだろうと思っていたところに

思いもかけず、声をかけて頂いた。

 

どこの沢にするか聞かれた時

真っ先に浮かんだのは、この弓ノ手沢だった。

 

 

 

 

ルート経験者ということで、計画を立てさせてもらう。

下山最後のポイントは何度も地図を読んだ。

いかにソフトランディングさせられるか、ただその1点に集中して。

 

 

 

 

答合わせがようやくできた。

あの日、私はやはりこのルートを歩くべきだったんだ。

 

 

 

 

自分で歩いたと言える沢は

アヤちゃんとふたりで歩いた沢ぐらいだ。

玉さんと歩いた沢は、完全にどれも連れて行ってもらった沢で

自分で歩いたとは、とても言えない。

もちろん今日も会の仲間に助けられながら歩いた沢だけれど

仲間と一緒に地図を読んで、地形を読んで

歩いて行くべき道を見出し

やっとこの弓ノ手沢を自分は歩いたと言えるようになったと思う。

 

 

 

 

それなのに、自分はまた迷子になりかけてしまった。

これまで避け続けてきたのだから、今さらなかなか治らないのだけれど

やっぱり人との関わり方がわからない。

距離感がわからない。

どう振舞っていいのかわからない。

迷走すればするほど、本来の自分の姿からかけ離れて行ってしまう。

自分の思いは違うと言いたいのに、声にならない。

声の代わりに、涙が出てしまった。

50を過ぎたオバちゃんがだ。

なんと情けないことか…それでも、一度あふれだした涙は止まらなかった。

 

 

 



シングルロープとダブルロープの違いを知らない私は

ジムで使っている防水加工もしていないロープを持ち込んだ。

50mのそれは、それだけだってなかなか重いのに

水を吸ってますます重さを増す…あたりまえだけど。

結局、Oさんがそのロープを持ってくれた。

本来なら自分がその重さを負わなくてはならないのに。

ずっと眺めていた背中で揺れるロープ。

自己嫌悪でいっぱいだった。

 

 

 

 

帰りの車で、また自分が許せなくなって

泣きそうなのがわかったから、ゴメンナサイで会話を終了させようとした。

なぜ、ゴメンナサイなのか問われて

もう涙を止めておけなくなってしまった。

 

自分の車に乗って、エンジンをかけたところで

ツネちゃんが心配して話しかけてくれた。

やっと正直に全てを話せた。

 

ここで逃げ出したくない。

私はこの人たちともっと関わりたいのだ。

 

 

<今日のルート>